チューニング

初心者向け ベアシャフトチューニングの方法

羽根なしの矢を混ぜて射つだけで、ノッキングポイントとスパインが合っているかがわかります。Easton のチューニングガイドを基準に、着弾の読み方と動かす向きを図で整理します。

By 編集部 14 min

2026年8月29日 更新

初心者向け ベアシャフトチューニングの方法

ベアシャフトチューニングは、道具を買い足さずにできる調整のなかで、いちばん情報量の多い検査です。羽根の付いていないシャフトを用意して、いつもの矢と一緒に射ちます。それだけで、ノッキングポイントの高さとスパインの適否がわかります。

手順自体は短く、はじめての人でもその日のうちに一通り試せます。難しいのは着弾をどう読むかのほうで、ここを取り違えると、調整するたびに悪化していきます。

この記事の手順と判定は、Easton のArrow Tuning and Maintenance Guide(PDF)に記載されている Bare Shaft Planing Test を基準にしています。同ガイドは弓具メーカーが公開している一次資料で、この分野で最も広く参照されているものの一つです。以下、ガイドに書かれていることと、編集部の補足は区別して書きます。

何を見ている検査なのか

矢は、弦から離れた直後にたわみます。まっすぐ飛んでいるように見えても、飛び出しの瞬間には上下または左右に振れています。この振れは2種類に分けられます。

ポーポイズィングとフィッシュテイリングの違い ガイドでは前者を Porpoising、後者を Fishtailing と呼びます。原因が違うので、対処も別になります。

羽根(ベイン、フェザー)は、この振れを空気抵抗で強制的に立て直します。つまり飛び出しの誤差を隠してくれるわけです。よく効く羽根ほど、よく隠します。

羽根を外すと、その補正が効きません。飛び出しの瞬間に矢が受けた力が、そのまま着弾のズレとして残ります。だからベアシャフトの着弾は「弓から出た瞬間、矢がどちらへ押されたか」の記録になります。

羽根付きの矢が中心に入っていても、それは羽根が誤差を吸収した結果かもしれません。 ベアシャフトを混ぜると、吸収される前の姿が見えます。

手順

ガイドが指定している条件は次のとおりです。

項目ガイドの指定
距離15〜20ヤード(メートルでも可)
羽根付き3本以上
ベアシャフト2本
狙点羽根付きと同一(identically-aimed)

羽根付きを先に3本、そのあとベアシャフトを2本、同じ狙点で射ちます。狙点を変えたら比較にならないので、ここは厳密に守ってください。

始める前のノッキングポイント

検査を始める時点で、ノッキングポイントがどこにあるべきかもガイドは示しています。スクエア(弦に対して直角)から1/2インチ(1.3cm)上、というのがリカーブの指かけ(RF)の初期位置です。

引用 Easton のチューニングガイド Fig.1 Nocking Point Position。弦に対して直角の位置から、リカーブ指かけで1/2インチ上にノッキングポイントを置くことを示す図
Fig. 1 - Nocking Point Position より引用。1/2" RF, CF が指かけ(リカーブ・コンパウンド)、1/4" CR がリリーサー使用時の初期位置です。
出典: Easton Technical Products「Arrow Tuning and Maintenance Guide」p.1 (PDF、2026年8月14日取得)

ここから始めて、検査の結果に応じて上下させます。現在地がどこか分からないまま動かすと、迷子になります。

ベアシャフトが羽根付きの近くに集まるようになったら、25〜30ヤードまで下がるとより細かく判定できる、ともガイドは書いています。

編集部の補足: これを1セットとして、最低3回は繰り返したいところです。ベアシャフトは射手のばらつきも拾うため、1本の外れ値が群の重心を大きく動かします。判断するのは個々の矢ではなく、重ねた群の重心です。

上下を先に合わせる

ガイドは「Porpoising を先に直すことが重要」と明記しています。上下がずれたまま左右を追うと、両方が干渉して収束しません。

ガイドはこの状態を図で示しています。

引用 Easton のチューニングガイド Fig.10 Porpoising。ノッキングポイントが低すぎる場合と高すぎる場合の着弾の違いを示す図
Fig. 10 Porpoising より引用。左が Nocking point too low、右が Nocking point too high。
出典: Easton Technical Products「Arrow Tuning and Maintenance Guide」p.5 (PDF、2026年8月14日取得)

図の左側、ノッキングポイントが低いときは、羽根なしの矢(上段)が羽根付き(下段)よりに集まっています。この対応関係を、判定表の形に置き直すとこうなります。

上下のズレとノッキングポイントを動かす向き ベアシャフトが上に来たらノッキングポイントを上へ、下に来たら下へ動かします。

  • ベアシャフトが羽根付きより上 → ノッキングポイントを上へ動かします
  • ベアシャフトが羽根付きより下 → ノッキングポイントを下へ動かします

ここは直感に反しやすいところです。「上に飛んでいるから下げる」ではありません。ベアシャフトが上に着弾するのは、ノッキングポイントが低いことを示しています

なぜそうなるのでしょうか。ノックは矢の「後ろ」なので、そこが下がると矢は前上がりに傾きます。前上がりで飛び出せば、当然上へ行きます。

ノックが下がるとポイントが上を向き、矢は上へ飛ぶ ノックは矢の後端です。そこが下がるほどポイントは上を向きます。

ガイドはもう一つ理由を挙げています。ノッキングポイントが低すぎると羽根がレストに押し付けられ、クリアランスの問題を起こします。上下がずれていると、別の不具合まで連れてきます。

なお、ベアシャフトが羽根付きよりわずかに下に着弾する状態が望ましい場合もある、という但し書きも付いています。完全一致だけが正解ではありません。

左右はスパインとプランジャー

上下が合ってから左右を見ます。以下は右利きの場合です。左利きは左右が逆になります。

ガイドの図では、的の上での着弾の分かれ方がそのまま示されています。

引用 Easton のチューニングガイド Fig.11 Fishtailing。硬い矢と柔らかい矢で、羽根なしの矢が的のどちら側に着弾するかを示す図
Fig. 11 Fishtailing より引用。左が Stiff Arrow(Unfletched shafts impact left)、右が Weak Arrow(Unfletched shafts impact right)。いずれも右利きの場合で、左利きは逆になると図中に記載があります。
出典: Easton Technical Products「Arrow Tuning and Maintenance Guide」p.6 (PDF、2026年8月14日取得)

これを対処まで含めて整理します。

左右のズレの読み方と対処

  • ベアシャフトが左(stiff = 硬い) → プランジャーの張りを弱める / ポンドを上げる / ポイントを重くする
  • ベアシャフトが右(weak = 柔らかい) → プランジャーの張りを強める / ポンドを下げる / ポイントを軽くする

3つの対処は、やっていることは同じです。どれも矢の実効的な硬さを動かしています。硬さは矢の品番だけで決まるのではなく、ポンドやポイント重量、プランジャーの張りと合わせた結果として決まります。

実効スパインを動かす3つの操作 同じ矢でも、この3つの操作で硬さの位置は動きます。

まず試すのはプランジャーで、弓や矢に手を入れる前にここで吸収できるか確かめます。ポンドとポイント重量は他の要素(速度、狙点、体への負担)にも影響するので、順番として後になります。

調整の刻みについて、ガイドはリカーブの指かけ(RF)に対して1/8回転ずつと指定しています。変えたら射ち直し、群が悪化したら元に戻して逆へ振ります。一度に大きく回すと、どの操作が効いたのか分からなくなります。

プランジャーの調整幅を使い切ってもズレが消えないなら、そのときは矢のスパインそのものが合っていません。ガイドも、左右の調整でベアシャフトが羽根付きに寄らない場合は、より硬い/柔らかいシャフトを選び直す必要がある、と書いています。

どこまで合えば合格なのか

ガイドは判断基準を数値で示しています。

20ヤード(18m)でベアシャフトの着弾が羽根付きより左右に6インチ(15cm)を超えてずれている場合は、機材側の変更が必要になる。

逆に言えば、15cm以内に収まっていればプランジャーなどの微調整で詰められる範囲、ということになります。「なんとなく近い」ではなく、この距離を目安に判断しましょう。

さらに、完全一致を目指さなくてよいという記述もあります。

よく調整された弓では、ベアシャフトはやや低く、やや stiff 側(右利きなら羽根付きの左)に着弾するのが一般的である。ベアシャフトがやや weak 側(右利きなら右)に着弾する状態で良い調整になることもあるが、そちらは多くない。

つまり狙うのは「ぴったり重なる」ではなく、わずかに下・わずかに左(右利きの場合)です。ここを知らないと、合っているものをさらにいじって壊すことになります。

合ったからといって、よく当たるとは限らない

ここが最も誤解されている点なので、原文の主旨をそのまま書きます。

ベアシャフトが羽根付きとぴったり一致したからといって、必ずしも良い集まりになるわけではない。それが示しているのは矢の飛びが良いということだけである。

ガイドはこの前提のうえで、集まりを詰めるための別手順(Fine Tuning / Micro Tuning)を用意しています。

つまりベアシャフトチューニングは「終点」ではなく「出発点」です。ここが合っていないと先へ進めませんが、合ったからといって点数が上がる保証はありません。関連して、ガイドは次の組み合わせも挙げています。

飛び集まりガイドの見立て
悪い良い硬い矢でよく起きる。飛び出しで傾くが、すぐ立て直るため集まりは許容範囲になる
良い悪い起こりうる。飛びの良さと集まりは別物
悪い悪いスパイン不一致か、そもそも調整できていない

集まりの崩れ方で原因が分かる

では集まりが悪いとき、次に何を見ればよいのでしょうか。ガイドは距離ごとの群の広がり方から原因を絞る方法を示しています。

引用 Easton のチューニングガイド Fig.15〜17。距離ごとの群の大きさのパターンで、正常・過剰な空気抵抗・クリアランス不足を見分ける図
Fig. 15(Good grouping patterns)、Fig. 16(Excessive Drag)、Fig. 17(Insufficient Clearance)より引用。
出典: Easton Technical Products「Arrow Tuning and Maintenance Guide」p.9 (PDF、2026年8月14日取得)

読み方はこうなります。

  • Fig. 15(正常) — 距離が伸びるにつれて群が比例して大きくなります。これが健全な形です
  • Fig. 16(空気抵抗が過剰) — 近距離は良いのに、遠距離で不釣り合いに大きく崩れます。速度の低下が早く、飛行が不安定になっています。羽根を小さくする、角度を寝かせるなどで抵抗を減らします
  • Fig. 17(クリアランス不足) — 遠距離は許容範囲なのに、近距離の群が距離なりに小さくなりません。矢が弓を通過する際に何かに接触しています

「70mで散る」と「18mで散る」は原因が違う、ということです。どの距離で崩れるかを見ないと、原因の切り分けができません。

やらないほうがいい条件

ここからは編集部の判断で、ガイドに明記されているものではありません。

フォームが安定していない時期にはやらないでください。 ベアシャフトはリリースの乱れを増幅して見せます。リリースが日によって変わる段階では、道具ではなく自分のばらつきを測っていることになります。それを根拠に矢を買い替えるのが、いちばんもったいないパターンです。

風のある日にもやらないでください。 羽根なしの矢は、風の受け方が羽根付きと違います。屋外なら無風の日、できれば屋内で行いましょう。

1セットで判断しないこと。 繰り返しになりますが、これが最も多い失敗です。

まとめ

  • ベアシャフトは「羽根に隠される前の矢の姿」を見るための検査です
  • 15〜20mで、羽根付き3本 → ベアシャフト2本を同じ狙点で射ちます。編集部としては3セット以上をおすすめします
  • 上下(ノッキングポイント)を先に、左右(スパイン・プランジャー)を後に調整します
  • 上下は「ベアシャフトが上なら上へ」。直感と逆になりやすいところです
  • 左右は右利きで、左=硬い / 右=柔らかい。まずプランジャーを1/8回転ずつ動かします
  • 18mで左右15cm超なら機材側の変更が必要です。狙うのは完全一致ではなく「わずかに下・わずかに左」
  • 合っても集まりが良くなるとは限りません。これは出発点であって終点ではありません

出典・引用について

本記事の手順と判定基準は、Easton Technical Products が公開している Arrow Tuning and Maintenance Guide(PDF、2026年8月14日取得)の Bare Shaft Planing Test の記述に基づいています。同ガイドの Fig. 1(p.1)、Fig. 10(p.5)、 Fig. 11(p.6)、Fig. 15〜17(p.9)を、説明のため改変せずに引用しました。 図の著作権は Easton Technical Products に帰属します。

その他の図版は当サイトが作成したものです。編集部の補足として書いた箇所は、本文中でその旨を明記しています。